前回までのあらすじ:
アメリカの医療・病院経営の修士課程の質を保証する認定制度が発足しましたが、アメリカでは、認定機関の設立だけでは学士・修士課程の認定制度は確立できません。理由は、認定制度は大学側と連邦政府の2箇所が関係するからです。今回は、2つめの連邦政府の関与についてファイラーマン博士談を参考にして書いてみます。
前回までのアメリカの医療・病院経営学部の誕生に至る背景、連載はこちら
(この連載の詳細は、著書をご参照ください。)
アメリカでは、大学や大学院の学部やプログラムの認定を行うのは、連邦政府の文部省が関係します。実際に認定を行うのは、連邦政府の文部省の承認を受けた民間の認定組織が行っています。この認定は、強制でなく任意です。これらの認定取得は連邦政府から補助金を貰うときに要求されるものです。この補助金制度は、すべての学部の認定に与えられるものではありません。例えば教育分野によっては、建築学は、学部の認定をとっても連邦政府の補助金対象になりません。
まとめてみると、ACEHSAが医療経営学修士課程の認定組織として連邦政府から承認を受ける目的は3つありました。
1.「医療経営学教育の質の向上」
2、「社会的地位の向上」
3.「連邦政府補助金の受給資格を得ること」
そこで、医療経営学修士課程の認定組織を設立するにあたって、病院経営に関係する複数の組織をて1つのまとまりにする合同委員会(Joint Commission) のモデルが使いました。モデルを利用した理由は、「医療経営学修士課程の卒業生を雇用するのは、病院であり、病院に関する代表的な組織はアメリカ病院協会(American Hospital Association:AHA)です。多くの病院はアメリカ病院協会から常に認知されたいと思っているので、病院の認知組織のような役割を果たしています。そこで、アメリカ病院協会に医療経営学修士課程認定組織の一員として参加してもらうことにしました。
こうすることで、病院は、医療経営学修士課程の認定組織から認定された医療経営学修士課程の卒業生を信頼し、その価値を認めて、結果的に病院もそこの卒業生を認知し、優先して雇用するようになります。このような考えから、アメリカ病院協会(AHA)、アメリカ病院経営士学会(American Hospital Administrators)ナーシングホームの経営者や公衆衛生の代表組織への参加を呼びかけたのです。そして1976年、医療経営学修士課程の認定機関となる医療サービス経営教育認定委員会(Accrediting Committee on Education for Health Services Administration: ACEHSA)が設立されました。
その時のACEHSAの会長としてファイラーマン博士が就任され、AUPHAの常任理事(Executive Director)も兼任されることになりました。
次回は、大学と大学院の医療経営学部の認定の違いを書いてみますのでお楽しみに!
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